当院の鍼灸治療は一般に「経絡治療」(けいらくちりょう)と呼ばれる特殊な鍼灸術です。
 「経絡治療」は鍼灸理論の原点である「黄帝内経」(こうていだいきょう)や「難経」(なんぎょう)という古典書を基にして、現代の鍼灸術に反映させた東洋医学のひとつで経絡(「気血」(きけつ)が流れている経路)上にある「経穴」(つぼ)に鍼灸を施し「気血」の働きを調和させて病を治す治療法です。
この医学はおおよそ二千数百年前に確立され、それ以後それぞれの世代が繰り返し臨床経験を重ねることによって発展してきました。


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実は「経絡治療」と言っても色々な経絡理論があります。したがって実際には治療にどの理論を採れば一番良いのかという課題があります。単一の経絡理論で問題が解決すれば簡単なのですが人体の病理を照らす明かりが様々な経絡理論であるとしてもヒトの病理を単独で照らしきるものはなく必ずどこかに影ができてしまいます。
このように単独の理論で問題が解決しない場合も実際の臨床ではたくさんありますがそういうとき別の明かりを足せばすべてを明らかにする可能性が出てきます。つまり様々な理論を駆使して最良の治療方針を選択していくとき複数の理論を矛盾なく運用できるのが「経穴ゲートスイッチ理論」です。

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 東洋医学ではひとのからだは「気」「血」が相互に調和し、盛んに働くことによって私たちの生命活動を維持していると考えます。そして、その調和の良否によって個々の健康の状態が左右されます。
 この「気血」の調和が損なわれると、五臓六腑のいずれかの働きが悪くなって、色々な病気が起こります。また経絡は全身をくまなく巡っていますから五臓六腑のどこかに変調が生じると思いもかけない箇所に色々な症状を発したりもします。
 「気血」の調和が損なわれる原因は内にも外にもありますが『内因無ければ外邪入らず』と言われるように、特に内に原因(内因)がなければ外からの原因(外因)だけで病に陥ることはありません。
 内因は「喜ぶ・怒る・憂う・思う・悲しむ・恐れる・驚く」などの感情が度を越したときに内因となります。外因になるものとしては風、気温(寒暑)、湿度(燥湿)があります。
 飲食労倦(暴飲暴食・過労)は外因にも内因にもなりえます。
 「経絡治療」では内因や外因の排除に止まらず、治療を継続することで自然治癒力を高めて内因を緩和して病に陥りにくい身体づくりにも効果を発揮します。


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 「経絡治療」では症状の原因とその治療方針を探るのに西洋医学にはない独自の診察法がいくつかあります。中でも一番重要な診察法は「脉診(みゃくしん)」といいます。
 「脉診」は左右の手首を走る橈骨動脈(とうこつどうみゃく)を診ることによって五臓六腑の状態をうかがいます。
 東洋医学では「脉診」は西洋医学における生理学検査や心電図、X線検査等々の検査と同様の意義を持ちます。つまり、からだに現れている症状の原因を東洋医学的に探るための色々な情報をこの診察法より得ることができるのです。
 西洋医学の場合、緊急時や入院時を除けば検査結果を得るのに多少の時間を要し、治療に正確に反映させるには次の受診日以後というのが一般的です。このため、数日前のからだの状態に対して数日遅れの治療を施すとういう矛盾があります。
 それに比べて「経絡治療」では「検査(脉診)→治療(鍼灸)→再検査(脉診)」を一回の治療の中で必要なだけ何回も繰り返し行い、治療効果を「脉診」のレベルで即時に評価することができます。

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 「脉診」は左右の手首の橈骨動脈の上下左右合計18ヶ所の診所を観察して、五臓六腑の虚実(弱ったり高ぶったりしていないか)や気血の虚実、流通の状態(滞りなく流れているか)などを診て治療方針を立てます。
 「経絡治療」ではひとが生来持っている生命力(病気を治す力=自然治癒力)や五臓六腑のどこに病の原因となる邪が侵入しているか?更にまた、その邪はどんな種類か?などを指に触れる脉の打ち様で診断します。これを「脉状(みゃくじょう)」と言って約30種類に分類して診断します。
 また、西洋医学的診断では血管の状態(動脈硬化の度合いや血液の流通など)、血圧、心臓の働き(不整脈など)が判ります。

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 「経絡治療」では生命維持活動の根源である「気血」の調和を図ることで自然治癒力を高めることができます。そしてその結果として症状を軽減したり取り除くことができます。
 また五臓六腑は「経絡」という「気血」の流通でつながっていて密接に関わりあっています。「経絡」の流れの上に治療上重要な場所がいくつかありそれを「経穴(つぼ)」と言います。「経穴」はからだの調和をはかるため日々刻々それぞれの「経穴」が役割を変えながら活動しています。
 治療をするにあたっては「経穴」に鍼や灸をすることで治療の効果を高めることができます。
 刺鍼法に関しては、からだの表面に浮きあがって盛んに働いている「生きて働いている経穴」を主に使いますから鍼の刺入の深さが極浅く、刺入痛がないことに特徴があります。
 また小児は8才くらいまではからだ全体が「経穴」であるかのように敏感ですから鍼を刺すことなく鍼先を皮膚に触れて撫でさするだけで治療はこと足りることがほとんどです。したがって新生児でも鍼灸治療は可能です。
 使用する鍼はディスポ鍼(使い捨て鍼)か患者さん各人専用のオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)の鍼を使います。
お灸は当院独自の方法でやけどにならず瘢痕の残らない「ねりもぐさ」を使用します。

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ねりもぐさ

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1:症状があれば必ず原因があります

 「経絡治療」ではからだに現れている「症状」を手がかりに病の原因や治療法を東洋医学的に考えます。
したがって西洋医学のように患者さんがいくら症状を訴えていても検査結果が正常範囲内であれば「何も異常がないから病気はありません」などというような診断を下してしまうことはまずありません。
 からだに感じる症状があれば、東洋医学的にはその原因を説明することが出来ますし、原因が判ればそれに対応する治療方針もおのずから明白になります。


2:体質改善ができる

 西洋医学は主に薬などを使って病を排除しようとします。長期間にわたってそういう治療を続けた場合、からだが外からの働きかけに頼りきってしまい、ひとが元々持っている自然治癒カが損なわれてしまうことがあります。
 「経絡治療」では病に陥る原因は自然治愈力が足りないか、十分に活用できていないからだと考えますから鍼灸治療によって自然治愈力を補ったり、本来有するものを最大限に引きだして自らの力で病に打ち勝つよう働きかけます。
 したがって治療を繰り返していくうちに同じ病には罹りにくくなったり、罹っても以前より軽くて済むようになります。
「経絡治療」で体質改善ができると言われる由縁です。


3:未病を治す

 「経絡治療」ではそのままにしているといずれ病が発症するはずのからだの変調を前以て「脉診」によって感知できるので、症状が出る前に治療を開始することができます。これを『未だ病にあらざるを治す』と言って、現代的に言えば「予防医学としての役割を果たすことができる」ということになります。
 「健康管理としての気血の調整」は「治療として行う気血の調整」よりも簡単ですから治療の間隔は数週間から数ヶ月に1回の受診でも健康管理が可能です。(治療間隔に個人差があるのは個々の生活環境や生命力・年齢によって個人差があるからです。)


4:西洋医学との併用

 西洋医学の治療で効果がはかばかしくない場合の主な理由は診断が間違っていない限り、ひとの生命力が衰えているか、うまく生かせていない結果ですから、生命力を強化することのできる「経絡治療」を併用することでより効果の上がる治療になる場合があります。したがって「経絡治療」を併用することで服用する薬を減らしたり離脱することもできるのです。
 いずれにしても質の高い健康管理を実現させるには東洋医学と西洋医学の長所を活かすよう心がけることが大切です。